ベランダのお客様〔スズメ編〕

 

 
桃の餌が完全にペレットに切り替わって少し経った頃のお話です。
それ迄桃に与えていた穀物餌を捨ててしまうにはもったいないと思っていた私は、 ふとベランダに遊びに来るスズメ達にお裾分けしてみようかと思い付きました。

我が家のベランダにスズメがやって来るのは、ほんの時々のことでした。
が、さすが目ざといですねぇ。
プランターの中に餌を撒いておいたら、2〜3日でちらほらと、 そして新しい餌場の情報はあっという間に広まったらしく、 数日後にはかなりの数のスズメがやって来るようになりました。
朝、餌の補充に私がベランダに出ると、 電線や隣の棟の手すりなどあちこちにスズメがとまっています。 「まさか私を見てるんじゃ・・・」と思ったらそのとおり、 私が部屋に引っ込んだと見るや、 一斉にスズメ達はプランターめがけて飛んで来るのでした。
飛んで来るのも速いけど、飛んで行くのもそれ以上のスピードで、 人の気配を察知すると、それこそ瞬きしてる間に姿を消してしまいます。
そういう訳で、 可愛いお食事風景を見学する為には忍者にならなくてはなりませんでした。
抜き足差し足忍び足、息を潜めてそぉっとそぉっと・・・。

忙しそうに餌をついばむスズメ達の中に、 一組の親子がいました。
まだクチバシの両端にヒナ特有の黄色い部分が残っている子スズメは、 半開きにした翼を震わせヒヨヒヨと鳴きながら、 親スズメに一生懸命餌をねだっています。
こういう時のヒナの可愛さは、格別ですね。
そのあどけない様子に顔をほころばせながら、
「ふ〜ん、五階のベランダまで飛んで来れても、 まだ親に食べさせてもらわないと駄目なんだなぁ」
と呟いた私の目が今度は親鳥に注がれました。
お母さんスズメ(お父さんかも?)の、まぁ大変なこと。
パカッと開いた子スズメの口に次から次へと餌を入れ続け、 自分が食べるヒマなどありません。 入れても入れても、 子スズメの“ちょーだい攻撃”は止まないのです。

おっと、私の気配に感づいて 5〜6羽いたスズメ達がてんでの方向に飛び立ちました。
こういうのを “クモの子を散らす” というのでしょうか。
「バッ!」という羽音がしたかと思うと一瞬にして居なくなっているのです。
と思ったら、ん? おや? 一羽だけ残ってる。
もうお分かりですよね?そうです、そうなんです。
こういう時に決まって逃げ遅れるのは・・・というよりも、
“あれ? お母さんやみんなはどこに行っちゃったの?”
といった様子で、ボーッと一羽たたずんでいるのは、 まだ警戒心の薄い子スズメだったのでした。
「チャーンス! これは撮れるかも!!」
私は、例によって〔ツバメ編〕の時のように 大急ぎでカメラを取りに走りました。
そして再び窓際に戻った私の目に映ったものは・・・。

それは、子スズメがひとりでパクパクと餌を食べている姿だったのです!!
「あーっ!なんだこいつ、自分で食べれるんじゃん!!」
決定的瞬間を目撃した私は、もう可笑しいやら嬉しいやら。
♪見〜ちゃった、見〜ちゃった、おかーさんに言ってやろ♪
こうくちずさみながら、シャッターを押したのでした。

写真は、ガラス越しに撮ったものです
スズメ巣立ちビナ・片足あがってるぞ

スズメ巣立ちビナ・目つぶってるぞ

結局、餌場の提供は二週間ほどで終わりになりました。 何故ってそれは、糞。
スズメ達が掻き出す土や餌の殻などが階下に飛び散るのは、 幸い奥行きのあるベランダなので 部屋寄りにプランターを置くことで避けることが出来ました。 (掃除は大変だったけど)
問題は糞。我が家のベランダだけで済んでいるうちはまだ良かったのですが、 お隣の欄干にも糞が行列するようになってしまったのです。
「うへー、こりゃまずいや」 ということで、あえなく ジ・エンド。
暫くの間は、ベランダの様子をうかがっているスズメ達に 顔を会わすのが忍びなくて・・・。
ごめん、人間の気まぐれで悪いことしちゃったね。
あぁ、いつか庭の在る一戸建ての家に暮らせるようになったら、 絶対絶対、実のなる樹を植えて、「バードテーブル」を置いて、 野鳥達が遊びに来る庭にするんだ! (1998年9月記)


スズメ巣立ちビナ・お気に入り

この写真が私の一番のお気に入り
引き伸ばしてトイレに飾ってます
 

 

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