ベランダのお客様〔ツバメ編〕

 

 
 毎年5月6月頃になると、決まって我が家のベランダの向かいの電線に、 ツバメの巣立ちビナ達が整列します。 飛べるようになってもまだ暫くは親に給餌してもらう日が続き、 親が近くにビューンと飛んでくると、 皆そろって口をパカッと開き、羽を震わせ餌をねだります。 愛らしいその姿は、桃の幼い頃のまんまで、 私はいつのまにやら顔がほころんでしまうのでした。
 

 

 ある日、そうあれは1995年6月9日、夕暮れ時のこと。
何気なく窓の外に目をやると、 ベランダの欄干にツバメが一羽とまっているではないですか。
こんなことは初めてです。 しばし動けず見つめていた私でしたが、「あ、写真!」と我に返り、 驚かせないよう腰を低くした態勢で、抜き足差し足、カメラを取りに行きました。
まずは、部屋の中からガラス越しに何枚かシャッターを切ってみます。
途中、ツバメと目が合いヒヤッとしましたが、良かった、飛びません。
よくよく観察してみると、胸にはまだ産毛が残っており尾羽もずいぶんと短く、 巣立ちビナに間違いないことがわかりました。
 

 

巣立ちビナは、人間に対しての警戒心がまだ薄いので、 私は大胆にも “窓を開けてみよう作戦” に出ることにしました。
「飛ぶなよ〜、飛ぶなよ〜」 心の中で、こう唱えながら窓をそろそろと開けていくと・・・。
完全に私に気付いているにもかかわらず、大丈夫、まだ飛びません。
時々こちらを気にしながらも、たぶんお母さんツバメを待ってるのでしょう、 気持ちは外の方に向いているようです。
 

 

周囲は分刻みで暗くなっていき、ピントが合いづらいことを歯がゆく思いながらも、 私は可能な限り写真を撮り続けました。 もう目線はさっきからバチバチ合っているというのに、 ツバメのヒナは少しも怖がる風は無く、 そうなると私もいっそう大胆になり、部屋から身を乗り出し、 ツバメに向けたレンズをじわりじわりと近づけていったのでした。
が、別れはあっけなく訪れました。 ツバメのヒナは、突然の強風に吹き飛ばされ、 ベランダから落ちるようにして飛んでいってしまったのです。 ああん、風のばかたれーっ!!
 

29枚撮った写真の中で、ただ1枚の正面顔。可愛いでしょ。

 

 

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