柚桃ちゃん 病院へ行く 1



1999年2月22日 我が家の一員になった柚。
時々するクシャミが気になるのと、 “オカメのヒナに菌は付きもの” なんて良くない噂も耳に入ってくるので、 直ちに健康診断に連れて行くことになりました。
今回、柚を診ていただいたのは、2年前に桃を診ていただいたところではなくて、 千葉県で開業なさっている鳥専門の獣医さんです。


1999年2月27日(土)

診察の初めには「お待たせしました」 終わりには「お大事にね」 と声を掛けてくださるS先生。
待合室も診察室も、そんな先生を慕ってやって来た飼い主さん達(+鳥)で あふれていました。
後で聞いたところによると、特にこの日は混んでいたようで、 待ち時間はざっと四時間ちょい。
朝も昼もご飯抜きになっちゃって、私のようなご老体にはちと辛かった。
(実は、この日、先生も体調が非常に悪かったんだそうです。 でもそんな様子を私達飼い主には微塵も見せず、 もくもくと診察を続けられてました。有り難うございました)
でもその反面、この待ち時間は、 他の飼い主さん達と鳥を見せ合ったりお喋りしたりと、 なかなかどうして、結構楽しい時間でもあったわけです。
あ、勿論これは自分の愛鳥が “深刻な状態でない”  ということが大前提ですね。
その辺りの面白楽しいお話は、『柚ちゃん 病院へ行く』 の【番外編】にでも 書いてみようかな、なんて思っています。
思っていたのですが、【番外編】は、 引っ込めさせていただくことにしました。
私の筆が遅いばっかりにどんどん時間が過ぎて行ってしまうのと、 『ごくたま日記』 の方にも書きたいことが溜まる一方なのに、 全然書けてないしで・・・。
面白いことが色々あったんですけど、すみません。
例えば、ちょこっとだけ書いてみますとですね・・・。
 ・診察室で飛んじゃった黄色いセキセイさんがいました。
  そのコが先生の頭上に来た時に、先生が片手で難なくキャッチしたんです。
  それがあんまり見事だったもんで飼い主さん達みんなで思わず拍手、 パチパチパチ・・・。
 ・体重測定の時、先生の 「いいコに出来るかな?」 の問いかけに、
  間髪入れず 「出来ないんです」 と答えた飼い主さん。
  その間(ま)と無表情さが可笑しくて、これまた一同大笑い。
 ・お喋りが素っ晴らしく上手なセキセイさんがいたんですよ。 そのコったらば・・・。
あーん、もっとたくさんあるんですけど、 キリが無いのでこの辺でおしまーい。(5/14 追記)


さぁ、やっと柚の順番がやってきました。
まずは「体重測定」からです。
なんと、ここで早くもハプニング発生!
柚をキャリーから出そうと手を伸ばした瞬間、 柚が先生の手を咬んだのです。
先生の右手の人差し指からは、 はっきりと赤いのが分かるほどの血が・・・。あっちゃー!
「まー、このコは気が強いわね。 それとも物凄い小心者かどっちかだわ」

柚は、ここへ来るまでも来てからも、 ずっと長いこと緊張の糸が張りつめた状態でした。
そんなところへ突然現れた先生の手。
私には、怖くて思わず咬んでしまった柚の気持ちが分かるような気がしました。
ショップから来たばかりの、この頃の柚は、いつもビクビクオドオドしていて、 人も信用しておらず、当然ながら “人間の手”  というものに対し恐怖心を抱いていました。
それは、離れた所で手のひらをかざしただけでも逃げ廻るほど。
オカメが他の鳥と比べて、 “ノミの心臓” と言われるほどに臆病者だということは 分かっていたつもりでしたが、実際に柚と接してみて、 無理強いや深追いは禁物、焦らずゆっくり仲良しになろう、  そう決心したところだったのです。
そして今、柚が人の手を強く咬んでしまったのを目の当たりにし、 私は先生にお詫びしながら、
「このコと仲良しになるのは、思っている以上に時間がかかるかも・・・」
と、改めて長期戦を覚悟したのでした。

診察室で順番待ちしている間は、よその鳥さんの診察を見学していられます。
先生は、体重を測定する時、 それぞれの鳥に向かってこう話し掛けます。
「さぁ、このコはいいコに出来るかな?」
“いいコ” とは、そう、 体重計の上でじっとしていられるコのことをいいます。
しかしこの時の柚は、軍手をはめた先生の手の中で、 一時も途切れることなく悲壮な声で鳴き続け、もがき続けていました。
完全にパニック状態です。  “いいコ” になんかなれる訳がありません。
すると先生は、暴れる柚をサッサと透明なプラスチックケースに入れ、 体重計に乗せました。
う〜ん、鮮やかな手つきです。
さて、柚の体重は・・・。
 「78g。 オカメの平均は80から100ですから痩せ過ぎです!」
痩せ過ぎ、痩せ過ぎ、痩せ過ぎ・・・。

           ショーック!

次に行われたのは、「そのう検査」と「糞検査」。
「そのう検査」は、 菌を持っていることの多いオカメインコには勧めている検査だそうで、 危険もありませんという丁寧な説明を受け、 私達は迷うこと無くお願いすることにしました。
話にはよく聞くけれど、見るのは初めてという「そのう検査」に、私は興味津々。
「そんなに大きく口を開けて。こっちの思うツボじゃないの」
先生は、相変わらずジャージャーとうるさく鳴き続けている柚にこう言いながら、 先端が少しカーブしている銀色の器具を口から滑らかに挿入していきました。
その器具の元の部分には注射器が付いていて、 そのうへ挿入吸引してそのう液を取り出すといった按配で、 想像していた以上に深いところまで突っ込むのに、 柚も他の鳥さんもちっとも苦しそうではありませんでした。
先生は、そのう液とキャリーの中に落ちていた糞を微量、 一枚のスライドガラスに手際よく並べると顕微鏡で見始めました。
まず “そのう”から・・・。
「あーっ、これは!?」
 (ここで先生、私達に画像が見えるようTVモニターのスイッチを入れる。 不吉な予感。)
「これ、分かりますか? 『らせん菌』 という菌です」
先生は棒状の菌を指し示すと、 手早く医学書を開いて、私達に写真を見せながら、
「こんな風に螺旋状になる菌ですね」
と、説明してくださいました。

           ダッブルショーック!!

“らせん菌” って何? とんでもない菌だったらどうしよう!
でも “リング” よりかはイイかも。 あ、あれはウィルスだったっけ。
などとおバカなことを考えている間に、先生は続いて糞の方を見始めました。
「あ、虫がいますねー」
画面には、今度は先生の説明を待たずとも、 素人目にもそれとはっきり分かるほどの沢山の虫が、 活発にうようよとうごめいているのが見えました。

           トリプルショーック!!!

           惨 澹 た る 結 果 !


そして治療の説明が始まりました。
「最初は弱い薬を出します。  初診のコに初めから強い薬は出せませんのでね。
 これで中にはキレイになるコもいますが、 大体は一週間飲ませて様子をみて、
 それから強い薬に変えていきます」

ということで、以下の三つの薬を処方されました。
【抗生物質・駆虫】  【ヨード入りビタミン剤】   【タンパク・ミネラル・カルシウム・整腸剤】
(前二つは水に溶かす薬、三つ目は餌に混ぜる薬)

次は、病鳥の看護の方法です。
要点は二つ。
●24時間明るくして、とにかく餌を一粒でも多く食べさせ体力をつけること。
  ・24時間明るくする理由は、 暗くすると活動が停止し餌を食べなくなってしまうから。
   (明るくても眠くなればちゃんと眠るので、睡眠不足の心配は不要とのことでした)
  ・鳥は拾い食いする習性があるので、新聞紙の上に餌を撒いておく。
●保温
  ・鳥が体調に合った温度を選択出来るように、 片側からの保温で温度の勾配を作ってやる。
  ・何度の室温に設定するとか、何ワットの電球で温めるとかではなくて、
   あくまでもその鳥が寒がらなくなるまで温める。
   (鳥によって固体差があり、先生曰く 「35度でも寒がるコは寒がります」とのことです)

寒がるといえば・・・。
鳥が “寒がっている” といえば、 羽を膨らませている状態をいうのは周知のことですが、 それでは反対の “暑がっている” というのはどうでしょう。
言葉では聞いていても、 実際には見たことが無い方もいらっしゃるのではないでしょうか?
実は私、一度だけあるのです。恥を忍んで告白しますと・・・。
現在の住まいに越してくる前、私達は、二階建てアパートの二階に住んでいました。
真夏のある日のこと、朝から桃をひとりで留守番させ、深夜帰宅してみると、 なんと部屋は凄まじい暑さ、サウナ風呂と化していたのです。
その時の桃の様子は、目に焼き付いて忘れられません。
桃は、全身これ以上に無いくらいに細くなっており、 熱を発散させる為なのでしょう、翼を身体から大きく浮かせていました。 そして口を開け、ハァハァとそれはもう苦しそうに呼吸していたのです。
あれは “暑がっている” などという生っちょろいものではありませんでした。
ひょっとしたら・・・、(うー、書くのも恐ろしい)間一髪だったのかもしれません。
鳥が今、寒がっているのか、暑がっているのか。
こんな大切なことに、あの頃の私は随分と無頓着だった気がします。
もう5年近くも前のことですが、今思い出してもゾッとする出来事でした。

話が外れました。
保温に関して妙に説得力があったのが、先生のこの言葉でした。
「お風呂に入った後は体が暖まってるでしょう?
 それでビールを飲むと普通よりもアルコールのまわりが速いように、
 (鳥も温めた方が)薬の効きも良くなるんです」

なるほどー。すごく良く分かるわぁ。

それから餌について教わったことです。  
■主食は、『殻付き餌』。  
 ヒマワリや麻の実のような濃厚飼料は、与え過ぎに十分注意すること。  
 与えなくても全く問題無し。  
先生のこの言葉に思わず大きく頷いてしまった私でした。  
私も、与えないより与える方が害があるんだという思いの方が強くなり、  
桃にはもう数ヶ月前からヒマワリを食べさせなくなっていたのです。  
(現在の桃のオヤツは、殻付き餌とソバの実)  
■ビタミンの補給に、なるべく毎日青菜を与える。  
 ビタミンAが豊富な緑の濃いものが良い。 (レタスやキャベツよりも小松菜、チンゲン菜など)  
う〜ん、やっぱり葉っぱものでは小松菜ですねー。  
今度こそは、柚を “小松菜大好きっ子” に育てるぞーっ!  
調べてみると根菜類ならニンジンが◎、ビタミンAは小松菜の倍ありました。  
ニンジンと並んで桃がよく食べてくれるブロッコリーは、 小松菜の5分の1程度でした。  
■カルシウムの補給に、ボレー(牡蠣ガラ)を与える。  
 着色されてない白いボレーが良い。カビ臭いモノには要注意。水洗いして天日に干せばOK!  
これは実際にカビてる商品に当たったこともあり、私は実践しています。  
鼻をくっつけてスーハー嗅いでたら、途端に持病の喘息発作が・・・。  
そう何を隠そう私は、アレルギー体質(抗原:ハウスダスト)なのでした。便利?(^_^ゞ  
■ペレットを与えるなら、柚のような成長期のヒナには、 「メンテナンスタイプ」ではなく、  
  「ハイエネルギーブリーダータイプ」の方が栄養的に望ましい。  
店頭に並んでないことが多いということで、 先生のところで分けていただきました。
忘れてました。 もう一つ、鼻が詰まっているかどうかを調べる検査がありました。
これはなかなか面白かったですねー。
透明な液体(生理食塩水か何か?)を両方の鼻の穴に一滴二滴垂らすんです。
健康だとスーッと染み込んでいくんだそうで、 柚は、左がちょっと詰まっていると言われました。
人間だったらたまらないだろうなぁと思えるこの検査も、 直後にちょっと鼻をクシュンとさせるくらいで、 鳥にとっては何てことなさそうなのが不思議でした。

診察初日の様子は、こんな感じでした。
そしてこの日から、柚の闘病生活が始まりました。

【柚の闘病状況】
アイアム闘病中1
カゴの下部を外し止まり木を低く取り付け、 新聞紙の上には餌を撒いておきます。
(落ちてる餌は、本当によく食べてました。先生の言ったとおり!!)
桃と同居の室内はオイルヒーターで暖房、柚には更に個別に加温しました。
先生のお勧めは、明るさと加温が同時に出来るスタンド電球や白熱球でしたが、
我が家では適当な照明が見つからなかったので、ヒヨコ電球を使用して、
カゴのすぐ上で蛍光燈を24時間点けていました。
写真にはぎりぎり写っていませんが、カゴのすぐ脇に温度計を置いて、
柚が寒がらない温度ということで、常に30度はキープしていました。
ということは、柚のいるカゴの中の温度はもう少しあったということですね。

アイアム闘病中2
薬を溶かすのが30ccという少量の水だった為、水面を少しでも上げて
飲みやすくしてやろうと、小さな入れ物(右)を探し買って来ました。
柚の糞には虫がいるので、糞で汚れた足を突ついて口に入れたりしないよう、
先生から「新聞紙はマメに取り替えるように」と指示されていたのですが、
私は、もうそれが気になって気になって気になって・・・。
柚が糞をするそばから、手を突っ込んではテッシュで拭いていたので、
柚はそのたび冠羽を垂直に立ててドキドキビクビク。ごめんね、柚。

3月6日(土)

闘病生活一週間後の二度目の診察日。
やはり先週は特別な日だったようです。(前日が学会で休診だったと聞きました)
この日は、一時間ほどで診察していただけました。

「えーと、このコは咬むんだっけ」
先生はこうつぶやいて、早々に軍手をはめました。
そうでした。先週、柚は先生の指を咬んだのでした。 傷は良くなったでしょうか。
そして今日もやっぱり大騒ぎの柚は、プラケースの中へと入れられました。

さて、注目の柚の体重は・・・。
「あら、太ったわね。よしよし、83g」
やったね、柚!  頑張ってご飯いっぱい食べたもんね。夜もずーっと食べたもんね。
続いてそのうと糞の検査。ドキドキドキ・・・。
「うん、どっちも大丈夫、キレイですね」
えらいぞ、柚! 頑張ってお薬だっていっぱい飲んだもんね。
念の為に引き続き一週間は薬を飲ませることにはなったけれど、先生には、
「もう来なくてもいいですよ」
と言っていただけました。
ばんざ〜い!\(^_^)/  ばんざ〜い!\(^_^)/  ばんざ〜い!\(^_^)/

診察も終わりに差し掛った頃、ふいに先生がおっしゃいました。
「あら、このコちょっと左目が腫れてない?」
私達の目の前に差し出された柚の顔を見ると、先生の言葉どおり、 確かに目頭の辺りが赤くなっています。 正面から左右を見比べても、明らかに感じが違っていました。
「ん? 何か入ってるのかな?」
先生は、柚の左目をティッシュでそっとぬぐいました。
凄い凄い! こんな小さな部位の異常さえも見逃さないなんて!
考えてみると人間のお医者さんは、内科、外科、眼科、皮膚科のように それぞれ専門が分かれているけれど、 獣医さんというのは、オールマイティを求められるんですね。

凄いといえば、やはり 「保定」 でしょう。
その後、先生は、柚に点眼しようと机の上に手を伸ばしましたが、 目薬がちょうど切れていたようで、助手の方に持ってくるよう指示されました。
と、先生は片手で柚を保定し、 更に柚の上まぶたを逆アッカンベーしたままです。
柚はその間ずっと鳴きどおし、けれど一切身動き取れず。
先生は、目薬が手元に来ると、点眼をチュッチュッと素早く済ませました。
本当に溜め息が出るほど見事な “技” でした。
(先生の見立てどおり柚の目には何かが入っていたらしく、 翌日にはもう腫れはひいていました)

そして先生は、最後に私達にこう言ってくださいました。
「健康診断ということで、早いうちに連れて来たのが良かったんだと思いますよ」
この言葉、とっても嬉しかった。
でもでもでも、何といっても先生のお蔭に決まっています。
柚の病気を治してくださって、本当に有り難うございました。

3月13日(土)

病気治ったの
一週間後。今日で投薬は終わりです。
朝一番に体重を測ったら、先週より更にまた5g増えて、
なんと 88g になっていました。
うんうん、これならもう大丈夫。
今日からは、夜、明かりを消してあげようね。
でも保温は続けよう。まだまだ寒いからね。

柚は、ともかくよく食べよく飲んでくれました。
本当にいいコでした。頑張りました。ハナマル。


【追 記】
柚が我が家に来たその時から、そして柚の健康がちゃんと確認されるまでは、 桃とはガラス越しに会わせるだけ、柚を触った手で桃は触らない、 と結構気を遣って過ごしていました。
それでも感染が心配だった私は、 同じ部屋にコザクラが同居していることを先生に告げました。
先生がおっしゃるには、
「“らせん菌”は、オカメに感受性が強い菌ですから、まず問題無いでしょう。
 糞の方も清潔を心掛ければ大丈夫」

ということでしたが、
「心配ならば連れて来なさい」
と言ってくださったので、3月6日二度目の受診日、 桃も一緒に連れて行き診ていただきました。
結果は、そのう、糞、共に問題無し。体重も51gで○。
ただ、そのうの液が少し粘り気を帯びているのが気になるということで、 3ヶ月後くらいにもう一度健診に行くことになりました。 まずは一安心です。ほっ。


以上、柚の健康診断の結果、及び闘病生活の様子をお伝えしました。
あれもこれも記録しておこう、憶えておこう、そう思いながら一気に書きあげたら、
いつの間にやらこんな長文に・・・。(^_^ゞ 
読んでくださって、有り難うございました。

(1999年3月記)     

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