柚桃ちゃん 病院へ行く 2 (後編)



長くなっちゃいました。飽きずに読んでくださって有り難うございます。
画像も多いし、前後編二つに分けてみました。少しは見易くなったかな?

6月5日(土)

二週間の投薬で、桃は完治しました。
前回の検査で、長〜く糸が伸びてたそのう液も、今回の粘り度はわずか1センチ。
その粘り気も、 スライドの上に乗せてしまうと、殆どもう感じられないとのこと。
そのうと糞にいた菌も、共にキレイに消えてて、
「これなら、もう大丈夫!」
と、先生も太鼓判を押してくださいました。

       やった!! (心の中でガッツポーズ)

実は、とっても苦労したんです。桃に薬を飲ませるのは。
桃は、普段から濃い色の着いたお水は駄目で、 麦茶、紅茶、コーヒー、コーラなんかをふざけて口元まで持っていっても、 決して口をつけようとしません。
そんな訳で嫌な予感はしていたのですが、案の定、 桃はお薬とビタミン剤で真っ赤になったお水なんか、 水入れの中を覗き込むだけで一口たりとも飲んでくれないのでした。
だから外に出たいという要求も強くて、 扉を開けてやると台所に向かって一直線にひとっ飛び。
そして振り返ると、私のことをじっと見つめるのです。
何度連れ戻しても同じことの繰り返しで、シンク自体を新聞紙で覆い防御したって、 蛇口の上に陣取って動かず、全身で  「お水出して」 と訴えてくるのでした。
「さぞや喉が渇いてるんだろうに・・・」
そう思うと、私も辛くて切なくて、 初日はついに根負けして水道の蛇口をひねってしまい、 桃は私の手から、それはそれは美味しそうにお水を飲み続けたのでした。
(この時に飲んだのは、今迄で最高だった8口を抜いて13口。記録更新だー!)

桃ちゃんの固い決心

「美味しいお水を飲ませてくれるまで、ここ動かないからねっ!」


「桃がどうしてもお薬のお水を飲んでくれなくってね・・・、 で、かくかくしかじかなのよ」
と、帰るコールの夫に泣き言を言ったら叱られました。
「そんなことで先生に何て言い訳するの?」
「え〜〜、だって全然言うこと聞いてくれないんだもん」
(と言いながら内心ムッとする私。ずいぶん簡単に言ってくれるじゃない。 桃の頑固さ、自己主張の強さは知ってるでしょーよ。 それに言われなくったって十分自分でも分かってるわい!)
「あー、こんなことではいかんいかん!  もっと心を鬼にしなくては!!」
私は、作戦を考えました。
赤いのは大体がビタミン剤の色だから、まずはそれを抜いてみることにしよう。
二日目、粉薬だけを溶かしたビタミン抜きのオレンジ色のお水を、 桃は何とか一度は口をつけてくれましたが、味が気に入らなかったのか、 嫌そうに頭をぷるぷるっと振ると、それっきり飲もうとしません。 惜しいっ。(で、またしても桃の要求に屈することに。無念じゃ)
とにかく水入れから飲んでもらわなければ始まらないと、 三日目からは、薬を溶かす水の量を30ccから40ccに増やしてみました。
おぉ、これなら何とか飲んでくれるぞ!
と、こんな具合に徐々に色と味に慣らしていき、 結局、先生の指示通りの希釈に出来たのは、 後半の一週間だけという結果になってしまったのです。
そういう経緯があったので、検査の結果が◎と聞いて、 私は本当にほっとしたのでした。
何より桃が美味しそうにお水を飲む姿を明日から見られるかと思うと、 それが嬉しくて嬉しくて。

残るは問題児、柚。
この日の糞検でも、二週間前と同じく虫は見つからなかったので、 その点では安心しました。
が、鼻水は相変わらず。 一日一回は、柚がクシャミで鼻水を飛ばしているのを目撃します。
それに加えてもう一つ心配なのは、 柚の体重が少しずつ少しずつ落ちて行くことでした。
5月8日には88gあった体重が、この日は79g。
これじゃ、殆ど我が家に連れて来た時に逆戻りしたも同じです。
先生は、柚が換羽の最中であることに気付くと、 体重の減少はそのせいもあるかもしれないとおっしゃいました。
「セキセイでも、換羽期には2gも落ちるコもいますからね」
確かに、柚は今、物凄い勢いで羽が抜け替わっています。
数日前には、大きい羽 (尾羽・風切り羽) も2本ずつ抜けました。
羽繕いをした後は、筆毛を包んでいた鞘のかけらと脂粉で真っ白になるほどです。
先生がおっしゃるように、 痩せてしまったのは “換羽” が原因でありますように・・・。
新しい羽を作るのに栄養がもって行かれてるだけでありますように・・・。
とにかく一粒でも多く餌を食べてもらう為に (それまでも深夜零時頃迄は明るくしていたのですが) 以前のように 新聞紙の上に餌を蒔いて24時間明るくする方法に切り替えることになりました。
そして鼻水の方は、前回の予告通り、 飲み薬の他に 「点鼻薬」 の治療も施すことに。
抗生物質と消炎剤を直接鼻腔に入れることで、大体は完治するんだそうです。
出来たら一日5〜6回、最低でも3回、 一ヶ月は継続して差して欲しいという説明を受け、 点鼻の仕方、一回の薬の量などを教えていただきました。
こんなこと言ってる場合じゃないけれど、 あぁ、どうかどうか柚に嫌われませんように・・・。

次回の診察は柚だけ、6月19日(土)の予定です。


注:私のフケではありません

換羽真っ最中の柚が羽繕いを終えた後は、こんな風になります。
この上ぶるぶるっとされた日にゃ、脂粉や細かい羽毛がぼわ〜っと広がって、
コーヒーカップなどは直ちに避難させないと大変な事態に・・・。
これを見た妹は、“うっ、病気になりそう” とたじろいでました。
(私、喘息の発作が出てるんですけど、季節の変わり目だからですよね、きっと。)


こんなにお顔が黄色くなりました1   こんなにお顔が黄色くなりました2

そして柚のお顔は、こんなに黄色くなりました。
時々、喉を震わせてさえずりの練習もしてるし、やっぱり男のコかな?
なのに夫は、まだ 「柚ちゃんは女のコ!」 と言い張っています。
可愛いのはみんな女のコって決まってるんだそう。変なの。



6月15日現在の状況です。
24時間作戦を行っているのにもかかわらず、 柚の体重は76g迄落ちてしまいました。
オカメ特有のほけら〜っとしてる時間もあるにはありますが、 具合が悪そうにうずくまっている
といった様子は無く、そこそこ食べてるし、 鳴いたり走ったりオモチャで遊んだりと、
見た目、元気は元気なんです。それとも、私の観察力が足らないのでしょうか。
あぁ、この調子でどんどん体重が減っていったら・・・。
「先生がついてるんだから大丈夫だって」
と平気にしている夫が、羨ましいというか恨めしいというか・・・。
私は心配で胃がキュ〜ッとしているというのに・・・。 何なのだ、この違いはいったい?
鼻水の方は、一進一退という感じでしょうか。
「よしよし、ここ2〜3日はクシャミだけで鼻水は見ないぞ」
と喜んでいると、あっけなく裏切られたりします。
それに柚は、点鼻の時に押さえつけられるのが嫌で、 薬の容器を目にした途端、
私の元から飛び退き、 とっとと早足で歩いて遠くに行ってしまうようになってしまいました。
手早く済ますよう心掛けてはいるのですが、 やっぱり先生のようにはいかないですねぇ。
今のところはまだ 嫌い=容器 のようですけれど、それももう時間の問題かも。
せっかく仲良しになれたというのに・・・、うぅ、悲しいです。(;_;)


6月19日(土)

柚、体重76g。
鼻水も相変わらず、2〜3日に一度はクシャミと共に噴射するのを目撃。

先生の出された指示、及び対策は以下の通り。
●体重減少
 ・引き続き24時間作戦。
 ・ペレットを粉末にして餌にふりかける。(柚が食べなくなってしまったので)
  さもなければ、メーカーを変えてみる。
 ・粟穂を与えてみる。
 ・太らせる為にヒマワリを与えても良いか伺ってみたところ、 オッケーをもらえました。
  ( 「でも数粒ね、数粒!」 と念を押されましたけども)
●風邪
 ・引き続き点鼻薬での治療。
 ・飲み薬(抗生物質+消炎剤)の消炎剤の割合を増やす。

「このコは男のコかな?」
先生は唐突にこうおっしゃいました。
「やっぱり・・・。さえずりの練習みたいなのもやってるんです。」
「でしょー」
そうです。この日、柚が男の子だということが決定的になったのです。
私は、柚の顔の黄色にばかり目がいっていましたが、先生は違いました。
尾羽の内側に、“下尾筒(かびとう)”  という尾羽をもっと短くしたような部分があるのですが、 先生は、そこに注目しながらおっしゃいました。
「この部分 “下尾筒”と言いますが、 小さいコや女のコには模様(縞)があるんです。
 でもほらここ、無地(灰色)の羽が一枚生えてきてますよね。
 このコは、もうすぐ彼氏になると思いますよ。」

この日、研修に来てらした男の先生は、柚を覗き込みながらノートにメモり、 私はといえば、隣に座る夫の顔を見ながら 「ほらね」 とニンマリ。

“下尾筒”がまだ縞々    “下尾筒”が大人の羽に

“下尾筒” の違いが分かるでしょうか。
右が7月15日現在。全ての羽がグレーになりました。
いずれ黄色い縞々の尾羽も灰色一色になります。


早速翌日、小さなスリ鉢とスリコ木、粟穂を購入。
そっかぁ、こうしてペレットを粉末にすれば、 餌と一緒に少しは口に入りますよね。
怖がるかなぁと思っていた粟穂も、驚くほどよく食べる食べる。
遊びながら一日で一本を丸裸にしちゃいます。
ヒマワリはやっぱり好きですねー。 食べさせ過ぎないように気を付けなくっちゃ。
本当に先生は、いつもいつもその時々に適切な指示をくださいます。
点鼻薬は、毎日4〜5回は差しているでしょうか。
悪いイメージが定着しないよう、 アフターケアには結構気を遣っています。
点鼻後は、「まきちゃん嫌い!」で終わらないよう、 一緒に遊んで撫で撫でもして・・・。
この調子でいけば、何とか嫌われないですみそうかなー。
私が鳥部屋に顔を見せると、 柚は翼をばたつかせながら一声大きく鳴いて走り廻ります。
そして、ウンをして右伸び左伸びをして外に出る準備。
「もしもし、誰が出してあげるって言った?」
だけど、キラキラおめめで私を見上げ、 入り口でスタンバッている柚には勝てません。
そうして私は、 また30分1時間と予定外の時を桃と柚と過ごしてしまうのでした。


7月3日(土)

柚のクシャミは、めっきり減りました。
少し前迄は、朝一番にクシャミ八連発なんてのをかましていたのに。
鼻水も、現場を目撃することはなくなりました。
体重は、前回と同じく76g。
先生のアドバイスのお蔭もあって、 増えないながらも何とか減少は止まったようです。
やはり換羽のせいだったのでしょう、とのことでした。
この日、オカメ五羽の飼い主さんからも、 換羽期に10gくらい落ちるコがいると聞きました。
こういう実際に飼ってらっしゃる方の言葉は、 獣医さんの言葉と同様に心強いですね。
この方が連れて来てたのが、2才になるオカメの女のコ。
柚よりも、もっとおめめがパッチリした超べっぴんさんでした。
夫は全身グレーのこのコを見てガックリ。
「駄目だ、柚はやっぱり男のコだ・・・」
まーだ言ってる。諦めの悪い人だね、まったく。

「点鼻、続けられますか? 風邪の薬が三種類も出てますのでね・・・」
長期間、多くの薬を服用させたくないということなのでしょう。
飲み薬の種類を減らして、 その分を点鼻薬でカバーすることになりました。
私もちょうど薬のことが気にかかってきたところだったので、 引き続き点鼻薬を続けることに少しも異存は無く、 それに私にとって点鼻生活は、もうすっかり習慣化してしまっていて、 ちっとも苦ではなくなっていたのです。 (二人がかりで押さえつけて点鼻しているというセキセイの飼い主さんは、 点鼻薬中止になっていました。私も桃だったら音を上げてたかも・・・)

余談ですが、先生のお喋りには、いつもほんと楽しませてもらっています。
「盛っちゃって・・・」
と、オカメの飼い主さんが報告すれば、
「あら、ルンルンしてるのね」
とニッコリ。
片方の鼻の穴に粟玉が詰まったオカメを診た時には、
「何、この顔!」
とプッと吹き出すと、保定中の鳥を飼い主さんに見せて一緒に笑いながら、
「時々、両方に詰まらせて慌てて連れて来る飼い主さんがいるわよ」
と、丁寧にピンセットで粟を取って上げてました。
手を出した途端に、 体勢を低くし口をカッと大きく開けて攻撃態勢に入ったボタンには、
「おっ、闘う気だな!」
と嬉しそうにしているし、
「ぼさぼさになっちゃった、ごめんね」  「さ、お家に帰るよー」
などなど、鳥に対して話し掛けるその言葉一つ一つに愛情が感じられるのです。
そしてこの日のヒットは、これ。
コザクラに点鼻する時に、先生は鼻にかかってる羽をかきあげながら、 こうつぶやいたのでした。
「オールバックにしないと駄目かな・・・」

     オールバックですよ! オールバック!!

あー、聞き逃さなくて良かったよ〜ん。
頭の中でコザクラと中年サラリーマンとがだぶっちゃって、 診察室で一人大受けしてた私でした。
先生は、本当に心から 「鳥」 がお好きなんですね。
ご自分の鳥も他人の鳥も、どの鳥もきっと隔たり無く。
だからこそ時には厳しくもなるんだと、 私はいつもそんなことを考えながら診察風景を見ています。 素敵な先生です。

「あと一回(の通院)で、お終いに出来ればと思ってます」
おぉ、やっと先が見えてきました。もうひと頑張りだよ、柚。
そして、本日の診察の締めの言葉は、
「じゃ、保温をしっかりね」
でした。

次回の診察は、7月17日(土)の予定です。

朝、出発直前に 大事件が発生しました!  もうホント泣きたくなっちゃった。
どうして私って、こういう出来事に出くわしてしまうことが多いんだろう。
いつもよりも早く出発する予定だったのに、このアクシデントの為に20分ほど遅れてしまい、
常磐高速を走ってジャスト1時間、 先生のところへ到着したのが8時20分でした。
この日も満員御礼で、診察が終了したのが午後1時過ぎ。
雨が降ってて湿度も高くて、待合室で汗だくになりながらも、 飼い主さん達は、愛鳥の為に
ひたすら我慢強く待つ待つ待つ。先生も、黙々と診察を続ける。
私らは体力の消耗激しくて、帰宅後シャワーを浴びて爆睡しました。
目覚めたのは、夕方6時。
「まだ診察終わってないんだろうなぁ。先生、お昼ご飯食べたのかなぁ」
そして、これから先、生涯多分、 鳥がいない生活というのはまず考えられないだろうから、
こうなったら先生のご近所に引っ越したろかと真剣に話し合った私達。
それほどに疲れ果てました。歳ですかねー。おー、ヤだヤだ。

7月17日(土)

「あんまり早く行って、 順番取りがエスカレートしていくのも困りもんだよなー」
そうも思いつつ、前回は非常に辛かった、今回が最後になるかも、ということで、
頑張って6時半出発の7時半到着。結果、本日は三番目に診ていただけました。

柚の鼻水噴射を目撃しなくなって、かれこれ一週間は経ったでしょうか。
「一週間見なければ、まぁ合格です」
という先生の言葉に、ほっ。
だからといって急に薬を切ることはせずに、念の為、 消炎剤だけはもう一週間飲ませ、 点鼻薬は残りを使い切ったら終わり、ということになりました。
クシャミの方は、多少は残っても仕方無いとのこと。
「人間だって、風邪を引いてなくてもクシャミをすることはあるし、 それにオカメはドンくさいから、 お水を飲んだだけですることもありますからね」
これは本当にそうなんです。
一口一口落ち着いてゆっくりとお水を飲む桃と比べ、 柚の飲み方は、お水の中に勢いよく顔をザボンと突っ込むので、 どうも鼻に水が入ってしまうらしいのです。ほんとドンくさいの。
体重の方は、やーっと増え始めまして、前回より2gアップの78g。
この調子で、せめてオカメの平均体重80gに乗ってくれるといいんですけども。
「じゃ、もう来なくてもいいでしょう。再発しないようにね」
笑顔の先生に見送られて、三ヶ月に渡った通院生活は、 この日でようやく終了となったのでした。

本日の先生の楽しいお喋り。
白オカメのピーチちゃんが、診察室で飛んでしまいました。
ぐるぐる旋回して、なかなか降りてきません。
数分後、私の頭に止まり飼い主さんの元へ。そして診察。
先生は、ピーチちゃんに話し掛けました。
「お散歩して、どうだった?」
いいないいなー。こういうの。
この日、帰りがけに、 玄関の外で顔見知りになった飼い主さん達とお喋りが始まりました。
その中に、腫瘍が出来てしまった足を切る切らないといった病状の セキセイさんを飼ってらっしゃる方がいて、 その方から現在の状況を伺った後で、セキセイさんを覗き込んだ私達。
途端にそれまでの深刻な雰囲気が一転、大笑いとなりました。
なぜって換羽真っ最中だったそのコは、 ツンツン羽だらけのハリネズミみたいなお顔だったから。
“どうして笑ってるの?” とでも言いたげなキョトンとした顔で見上げてるのが、 とってもとっても可笑しくて可愛かったんです。
「こんな顔じゃぁ、先生に笑われちゃうねー」
と、飼い主さんも言ってらしたけど、 出来ることなら私も同席したかったなぁ。
先生は、にこにこしながら、このコにどんな言葉をかけたのでしょうね。

振り返ってみると、通院は大変だったけれど、 終わったら終わったでちょっと寂しい気もします。
先生やお知り合いになった飼い主さん達とも、 もうお会いできなくなっちゃうんだなぁ。
住所を交換してお手紙のやり取りをするようになった方からは、粟穂やヒマワリ、
それと見たことの無い珍しいオヤツ  (ラフィーバの何たらって聞いたような・・・) をいただいたり、
私の実家近くにお住まいの方とは、ローカルな話で盛り上がったりもしました。
「色が綺麗!」「性格がいい!」  「目が大きくて可愛い!」「小顔で男前!」 などと
桃や柚のことを言われれば、 自分が誉められた訳でも無いのに嬉しくなっちゃって。(^_^)ゞ
そうそう、この日は診察室で “お見合い” をしたのですよ。
柚より一ヶ月お姉さんの白オカメのピーチちゃんと、 素晴らしく綺麗なパールオカメの女のコ、
そして柚の三羽をくっつけ合って、 「ハイッ、こんにちはねー!」
「柚ちゃんのお嫁さんにしてもらう?」  「いやー、ウチのはまだまだお子ちゃまで」
な〜んちゃって可笑しいでしょ。でもでも楽しかったなー。
とにかく先輩飼い主さん達には、 オカメのことや治療について色々とお話が聞けて、
勉強にもなったし心強くもありました。
そしてS先生。  うちのコ達の病気を治してくださって、心から感謝しています。
あんなに大勢の飼い主さんに慕われて、数え切れないほどの命を救って・・・。
同年代であり同性でもある先生を、私はいつも尊敬の眼差しで見つめていました。
それに比べて、社会に何の貢献もせず、桃と柚を守るのが精一杯なだけの私・・・。
私にとってのこの三ヶ月間は、人間の質とか器といったものの差を感じさせられ、
少しばかり情けない気持ちにもなった、そんな日々でもあったのでした。
最後に、柚の体重が、今日7月30日現在、更に2〜3g増えて、 念願だった80台に乗ったことをご報告して、
終わりにしたいと思います。
長いこと読んでくださいまして、有り難うございました。

“体重、だんだん増えてきたんだ         “私はいつだってベスト体重よ

柚  「柚ちゃん風邪なおったの。 それに体重も81gになったよ。
でもね、もっと太らなくっちゃ駄目なんだって。
西澤のおウチで暮らすには、痩せてちゃいけないんだって。」

桃  「私は、いっつも51g、ベスト体重だもーん」


前編はこちら!

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大事件発生!

7月3日 午前7時。
「しまった! 温度計持ってくるの忘れた!!」
いざ出発という段になって忘れ物に気付いた私は、 大急ぎで五階の我が家に戻り、再び一階へと取って返しました。
エレベーターから降り、歩きかけた私の視線の先に何やら茶色いものが・・・。
ん?枯れ葉? よくよく目をこらして見てみると、 床にスズメが一羽うずくまっています。
あ、またか・・・。
そうなんです。ウチのマンションは、 一階のエレベーターホールがガラス張りになっているので、 開け放してある扉から鳥が入り込んで出られなくなる といった事態が時々起きるのでした。
私自身、そういう場面に遭遇したこと過去に二回。
散々脱出を試みて疲れきったと見えるムクドリ、セキレイ (共に成鳥になりきってない社会経験不足の若鳥でした) を逃がしてやったことがあったのです。
「あららら、また出られなくなっちゃったのね」
私は、腰を低くしてそっとスズメに近づいて行きました。
すると驚いたスズメは、ガラスに向かって一直線に飛び立ち、

       ゴンッ!  そして墜落!!

なんと、ひっくり返ったまま動かなくなってしまったのです。
駆け寄って手に乗せると、目は閉じてるけど息はしています。
脳震盪だけだったら目を覚ますかも・・・。
ところが衝突したガラスに目をやると、何かが!
水っぽい何かが、べちゃっとくっついているではありませんか!!

      ぎょえ〜〜〜っ!! な、何だ、これは!?

もしやもしや、内臓とか脳みそが出ちゃったとか?
仰天した私は、取り乱し、 よく考えもせずに玄関外の植栽の根元にスズメを寝かせました。
スズメは、目を閉じ指を丸め足を上にして横たわったまま、 ぐったりして動きません。
かすかに胸が動いてるだけで、見た目は丸っきり死体です。
「だ、駄目だよ、これじゃ〜」
雨降る中、こんな場所に放置して身体が冷えたら助かるものも助からない。
それに猫だってウロウロしてる。
私は我に返ると、車で待っている夫を呼びに行き、相談の上、 取りあえずスズメを連れて一旦部屋に戻ることにしました。

小さな小さなスズメは、すっぽりと私の手の中に包まれていました。
鳥は体温が高い為、人間の手の中で温めているつもりでも、 実は反対に熱を奪っているのだと、そんな獣医さんの言葉を思い出した私は、 夫に家にある中で一番小さな水槽を用意するよう頼みました。
「大きい方がいいんじゃないの?」
「ううん、 もしも元気になった時、 野鳥はパニクるから、大きいのだと暴れてあちこちぶつかって危ないの!」
これも何かの本に書いてあった獣医さんの受け売りです。
その中に新聞紙とタオルを敷いて、間にホッカイロを挟んでと、 言うより自分が動いた方が早そうなので、途中夫にスズメを任せることに。
あたふたと準備をしながら動き回っていると、鳥部屋では夫が叫んでいます。
「大丈夫か!? 頑張れーっ!!」
半ベソをかいてる私に言っているのかと思ったらそうではなくて、 後で聞いたらスズメに呼びかけていたんだそう。
「声をかけると目を開けるんだよ」
そうしていないと、二度と目を覚まさないような気がしたんだそうです。
用意が出来て、スズメをそっと中に寝かせました。 やはりまだ動く気配がありません。
「このまま先生のところへ連れて行こうか?  でも連れて来られても先生だって困るよね」
どうする?どうする? 水槽を抱え、 おろおろしながら埒のあかない会話を暫く続けていると・・・。
おぉー!! スズメが少しずつ身動きを始めたではありませんか。

身体がどうかなっちゃってよろめいているのか、 それともタオルに足をとられてよろめいているのか、 どっちだか分からないけれど、 よろよろしながらも必死に立とうとしているスズメ。
よしよし、いいぞ、頑張れ!
私達は、水槽ごとスズメをベランダに運びました。 蓋を開けて様子をみます。
お願い! 飛んで! 飛んで! 飛んで! 飛んで!
出易いように水槽を傾けてみると・・・、どうでしょう!
スズメはベランダに一瞬降り立ったと思うと、 目にも留まらぬ速さでベランダの柵の隙間をすり抜け飛び立ったのです。
夫が急いで欄干に走り寄り、スズメの後を目で追います。
「大丈夫、しっかり飛んで行ったよ」
部屋の中にいた私にも、隣接した原っぱに降りて行くスズメの姿が見えました。
落ちたのではなく、ちゃんと羽ばたいているスズメの姿が。

ほっとしたのも束の間、一階では、柚が一人車の中で待っています。
さぁ、急いで病院へ行かなくっちゃ。
エレベーターホールに降りたところで、 私は、スズメがぶつかったガラスに近づいてみました。
ついさっきまでは怖くてちゃんと見ることが出来なかったけれど、 今、こうしてまじまじと観察してみると・・・。
なーんだ、ガラスに付着しているものは、糞でした。
ぶつかった衝撃で脱糞してしまったんですね。

数年前、霞ケ浦湖畔の路上で、自動車に衝突した直後と思われる、 まだ温かいジョウビタキの雌を拾ったことがありました。
外傷が全く無かったことから、今回のように、 “脳震盪でありますように” と祈りながら温めたのが、 みるみる口から黒い液体が出てきて、結局駄目で・・・。
その時の記憶が脳裏をよぎったんだと、だからあんなに恐ろしかったんだと、 落ち着いてみて、ようやく理解できました。
それにしても、鳥が目を閉じ横たわっている姿というのは心臓に良くないですね。
勿論犬や猫だって胸が痛むのは同じだけれど、 鳥はどうしてもウチのコ達にだぶってしまう・・・。

車が走り出してから、夫と二人、しみじみ助かったことを喜び合いました。
もしももしもスズメがあのまま命を落としていたら・・・。
放っておけば自力で出られていたかもしれないものを 余計な事をしてしまったと、 きっと私は罪悪感にさいなまれていたことでしょう。
以上が、7月3日 朝の事件の一部始終です。


目覚めたスズちゃん1    目覚めたスズちゃん2

今思えば、スズメがぐったりしてる写真もあれば良かったなーと。
そうしたら、もっと鮮明に状況を伝えることが出来たのに・・・。
あの姿は、相当インパクトあったですよ。
でもそれは、助かったからこそ言えること。
スズメが目覚めるまでは、写真を撮る余裕なんて全然無かったんです。

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